直接的な嫌疑は不正に現金を日本国内に持ち込んだ外為法違反なのですが、最大の問題はその使途にあります。言わずもがな、使途に関する疑いは、中国系IR企業は北海道の留寿都村にIRを誘致すべく、秋元議員に同現金を賄賂として渡したのではないかと云うものです。実際に同議員は、同村や国土交通省において同中国系企業の関係者と面会するなど、留寿都村への誘致に向けて動いていたとも報じられ、疑いは濃くなるばかりです。横浜市による不意を突いたようなIR誘致発表も、菅官房長官が背後で働きかけたとする指摘もあり、IR誘致には、何やら政界と関連した黒い影が見え隠れするのです。
そして、この事件において注目すべきは、日本国の利益誘導型政治が、新たな形態に変化してきていることです。利権政治と評されたかつての日本国の政治風土は、地方出身の政治家が、自らの選挙地盤に対して特別の便宜を図ろうとしたために生じた腐敗構造です。新幹線の停車駅の選定などはその最たるものであり、有力政治家の政治力が事業の合理的な判断さえ捻じ曲げる事例も少なくありませんでした。そして、関連する事業者から政治家へのキックバックや贈収賄もセットとなっており、政治腐敗の元凶とされたのです。最近は、地元への利益誘導に対する批判が高まったために政治改革が叫ばれ、政治家による露骨な行動は影を潜めたのですが、―ただし、桜を見る会問題はある- 今般の事件は、旧来の利益誘導型とは異なるタイプの腐敗が生じつつある現状を露呈しています。それでは、旧型の利益誘導と新型の利益誘導とでは、どのような違いがあるのでしょうか。
第一に挙げられる相違点は、贈賄側が、日本企業ではなく海外の事業者や利益団体である点です。かつての旧型の利益誘導における当事者は、贈収賄の双方ともが日本の政治家であり、日本の事業者です。このため、誘致された事業から生まれる利益は、それが政治家の地盤となる地方に限定されたものであれ、少なくとも日本国内に還元されました。ところが、今般のIRに参加を表明している企業の多くは海外企業です。言い換えますと、日本国の政治家が、海外に対して利益誘導している構図となるのです。
第一に関連して指摘すべき点は、贈賄側が海外企業となる場合には、本国の腐敗体質が日本国内に持ち込まれる可能性が高くなることです。政治腐敗は普遍的な現象とは言え、今般の事件では、中国系企業が贈賄の当時者です。これも、中国の特徴とも言える利権がらみの政治腐敗の体質が日本国に及んでいる徴候です。おそらく、中国では、政治家や官僚等に対する贈収賄は日常茶飯事であり、日本国にあってもお金の力があればいとも簡単に誘致を実現できると考えたのでしょう。賄賂文化の発祥地、あるいは、賄賂戦略の本拠地が海外にある点において、村社会の延長線上にある旧来の利益誘導と海外由来の新型の利益誘導との間に違いを見出すことができます。
第三の相違点は、収賄側の政治家は、必ずしも地方を地盤とする地元名望家タイプの議員ではない点です。秋元議員は東京15区選出であり、出身地も江東区ですので、都市型の政治家です。第一の相違点として述べたように収賄側は海外事業者ですので、贈収賄双方の間に地縁や血縁的な繋がりはなく、秋元議員がターゲットになった理由は、同議員がIR担当の内閣副大臣であったからに他なりません。つまり、新型には職権と結びついた‘汚職’の色合いが強いという特徴があるのです。
以上に主要な相違点を三点ほど挙げてみましたが、ここから見えてくる新型利益誘導の特徴は、植民地化の手法とも似通っているように思えます。植民地支配は、圧倒的な軍事力を以ってアジア・アフリカ諸国を屈服させたとするイメージが強く、植民地化した側のみに一方的に批判が集中する傾向にありますが、その過程を具に観察しますと、必ずしも武力が行使されたわけではなく、植民地化された側にも問題がないわけではないことが分かります。何故ならば、植民地化された側にも、海外勢力から賄賂を受け取って自国の権限や利権を売り渡した君主や有力者が必ずと言ってよい程に存在していたからです。植民地支配は、第一義的に植民地化した側に非があるものの、売国者の出現が、その国の運命を決定付けたこともあったのです。
グローバル化の流れの中で公共調達の分野にまで海外企業が参入し得るようになり、かつ、グローバル化の推進者として中国系企業の進出が著しい今日、日本国は、新たなタイプの政治腐敗の危機に直面しているように思えます(IRの一件は、氷山の一角かもしれない…)。そして、今般の事件が、IRは日本国民にとりまして真に必要なものなのか、あらためて問うてみる機会とすべきではないかと思うのです。
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