万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

スパイ防止にはCIAモデルよりFBIモデルでは?

 今やエプシュタイン事件は全世界を巻き込み、各国で地殻変動が起きつつあるように思えます。同事件から学ぶことも多く、日本国も例外ではありません。設立が急がれている国家情報局につきましても、その主たる目的が国家機密やインサイダーとなり得る情報の漏洩や海外からの工作活動を阻止することにあるならば、米CIAをモデルとしてはならないように思えます。

 

 ニューヨークの名門私立高等学校であるドルトン校の数学の教師であったジェフリー・エプシュタインが、投資の世界に身を置くようになったのは、ベアスターンズ会長の知古を得たことによります。同校を辞して1976年に同社の社員となるのですが、1982年には自ら「J・エプスタイン・アンド・カンパニー」を設立し、富裕層を対象とした資産管理事業を手がけるようになります。2000年頃には‘富豪’と見なされるまでの財を築くものの、その経緯や手段については不透明な部分が多々あるそうです。エプシュタインが、ニューメキシコのゾロ牧場を手に入れたのが1993年であり、所謂‘エプシュタイン島’を購入したのは1998年のことですので、1990年代にあって、相当の資産家であったことが窺えます。なお、この時期に、不自然で驚異的な蓄財に関連して既に「アメリカの諜報機関(米CIA)の手先として動いている」とする噂があったことは、極めて興味深いことです。

 

 かくして大富豪の一員となったエプシュタインは、一度は2006年に起訴され、有罪判決を受けるものの(司法取引により事業活動は継続・・・)、2019年7月6日に逮捕されるまでの間、‘投資家’の仮面の下で犯罪やスパイ行為を重ねていたことになります。それでは、何故、エプシュタイン事件が発覚したのかと申しますと、これは、警察のお手柄としか言いようがありません。2006年の一度目の逮捕の際には、フロリダ州のパーム・ビーチの警察が動き、検察官による起訴に漕ぎ着けています。また、2019年7月にフランスからの帰国時における二度目の逮捕は、連邦捜査局とニューヨーク市警察による児童犯罪対策部隊(FBI-NYPD Crimes Against Children Task Force)によるものです。言い換えますと、仮に警察やFBIが動かなければ、エプシュタインの身柄は今なお安泰であり、全ての悪事は闇に葬られたかもしれないのです。

 

 エプシュタイン事件の事例は、日本国にあってスパイ活動を防止しようとするならば、日本版CIAを新設するのではなく、FBIといった捜査当局のパワー・アップに努めるべき事を示唆しています。否、上述したように、‘エプシュタインCIAスパイ説’も囁かれていたぐらいですので、米CIAに倣うのでは、国家情報局の活動が逆方向を向くリスクさえあるからです(国家情報局の対日スパイ組織化・・・)。かくしてエプシュタイン事件の一連の経緯からしますと、日本国の安全を護るためには、国家情報局の構想は一から見直すと共に、スパイの活動対象となる政界やビジネス界に対する捜査能力を向上させる方が、余程、効果的なように思われます。もっとも、ゾロ牧場の事件については、1990年代から疑惑が持ち上がりながらFBIは捜査を怠ったとされており、FBIモデルも完璧ではないようです。この点を考慮しますと、捜査当局や警察組織に対する政治介入を遮断するための制度整備も合わせて実施する必要がありましょう。

 

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