万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

電力市場で自由競争は成立するのか

送配電、公的機関で一括運営検討…発電参入促す(読売新聞) - goo ニュース
 本日の新聞報道によりますと、経産省は、電力事業について、発電事業における新規参入を促すために、発送電分離の方針で検討を進めるそうです。以前のブログ記事でも、再生エネ法との両立の困難性について述べたのですが、ここは原点に返って、電力市場で自由競争は成立するのか、という基本問題を議論してはどうかと思うのです。

 何故ならば、既に指摘したように、電力市場では、電源によって大きくコストが違っているからです。福島原発の事故後の再見積もりでも、原子力太陽光発電との間では、3倍から4倍のコスト差があります。また、自由競争には、競争を通したコストの低下と品質の向上といったメリットもあるのですが、電力市場では、このメカニズムが働くのかどうかは未知数です。原子力発電によってもたらされる電力は、均質、安定、大量、コスト安である一方で、火力は、コスト高、再生エネルギーに至っては、不均質、不安定、少量、コスト高なのです。再生エネの唯一の利点は、”安全”なのですが、安全に対してどれほど競争上の優位性が認められるかは分からず、もし、この状態で、自由競争を行うとしますと、原子力発電の圧勝となる一方で、太陽光発電は淘汰されるかもしれません。実際に、再生エネ分野だけを見ても、欧米諸国では、割高な太陽光発電から風力へのシフトが起きているとも報じられています。自由競争が成立するには、再生エネルギー技術におけるもう一段のイノベーションが必要なのです。
 このように考えますと、電力市場で自由競争が成立するのか、大いに疑問があります。発電事業への参入を自由化し、さらには小売りの契約を自由化したとしても、採算が取れずに事業からの撤退が相次ぐかもしれませんし、あるいは、再生エネに賛同する企業や消費者による小規模な再生エネ市場が形成されるかもしれません。

 そして、このことは、再生エネ法のみならず、政府が立案するエネルギー基本計画と自由競争もまた両立しないことを意味しています(自由競争の結果として電源の比率は変化する…)。電力市場では、全体としての自由競争が成り立たず、かつ、エネルギー源の分散の観点から、何らかの政治的な関与を行うならば、少なくとも、再生エネ法よりも、再生エネ電力枠を設け(電力の質が低下するため、無制限に再生エネ電力の供給を増やすことはできない…)、その枠の中で、コストと品質を競う自由競争を実現した方が、はるかに”まし”なのではないかと思うのです。

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