今般、最も熱心なNPT推進派として知られてきたフィンランドが、核兵器に関して自国を縛ってきた法律を改正し、領土内での核兵器の輸入・運用・供給・保有を認めることとなりました。同方針の転換は、トランプ米大統領がNATOから距離を置く姿勢を見せる中、イギリスとフランスが進めている独自の‘核抑止構想’への参加するための措置として説明されています。アンティ・ハッカネン国防相も、「われわれはフィンランドの防衛力を強化し、フィンランドを保護するためにNATOの核抑止力を完全に活用できるようにする」と、Xに投稿しています。
既にアメリカの核兵器とはいえ、核兵器は、ニュークリア・シェアリングの概念の下でドイツ、イタリア、トルコ等に配備されていますので、フィンランドにおける法改正については、他のNATO加盟諸国と足並みを揃えたとする見方が大半を占めています。日本国内のメディアでも、対ロシアを想定したNATOの戦略の一環と解説し、新聞の紙面でも、‘核持ち込み認める法改正案を可決’とする見出しが踊っています。
日本国内でも、「非核三原則」が自国の政策を縛ってきましたので、フィンランドの方針転換は、おそらく日本国内でも見直し論を後押しすることとなりましょう。もっとも、日本国の場合には、欧州諸国よりも、より深刻な問題として現実を突きつけられるかもしれません。欧州諸国の場合、仮想敵国はロシア一国なのですが、日本国の場合には、ロシアのみならず中国や北朝鮮とも対峙しています。さらに事態を複雑にしているのは、イギリスやフランスといったアメリカに代わる‘核の傘’の提供国が存在していない点です。アメリカは、NATOのみならず日本国からも手を引く可能性があるのですが、この場合、日本国はお手上げ状態となります。
そして、ここで留意すべきは、メディアではNATOの核戦略が強調されつつも、フィンランドの法改正では、核兵器の‘保有’をも認めたと解される点です(メディアは、この点については言葉を濁しているような・・・)。フィンランドが核保有の是認に転じるとすれば、同法改正は、いよいよNPT体制の崩壊が始まったこととなります(結局、イランも核を保有することになるのでは・・・)。ロシアのみが反発しているようですが、アメリカをはじめ、他の諸国からはフィンランドを激しく批判したり、制裁を主張する声は聞えてきません。実際に、フィンランドが核開発に着手したわけではないのですが、少なくとも保有を認めたことは、それが、核保有国からの譲渡や購入であれ、フィンランドが自らの判断で押すことができる独自の‘核のボタン’を持つことを意味します。
以上の諸点や今日の国際情勢からをしますと、フィンランドの法改正の行方につきましては、幾つかの可能性があり得ることとなります。(1)一般的な説明どおり、NATOの核抑止構想に寄与する、(2)独自の核保有により、中立政策に回帰する(核武装中立路線)、(3)親ロ政権が成立した場合、NATOの‘小早川’になる、(4)グローバリストが画策している核戦争の‘駒’となる・・・などなど。これらの何れであっても、フィンランド一国のみの問題には留まらず、全世界に多大な影響を及ぼすこととなりましょう。
実際に、どのような展開になるのかは、現時点では確かなことは分かりません。しかしながら、NPT体制が崩れ、核武装中立の路線もあり得るのですから、日本国も、本格的に自国の核政策については、現実的な立場から議論を進めるべきではないかと思うのです。
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