万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

皇室典範改正より憲法第1条の手続き法の制定では

 報道に因りますと、先の衆議院議員選挙にあって圧倒的多数の議席を獲得した自民党では、皇室典範改正に向けた動きが活発化しているようです。自民党による‘強行突破論’も登場してきているのですが、実のところ、憲法に従えば、先ずもって取り組むべきは、憲法第1条に関する手続き法の制定ではないかと思うのです。

 

 日本国憲法第1条には、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」とあります。憲法上の天皇の役割とは、国家国民の統合を象徴するところにあり、象徴天皇と称される所以でもあります。その一方、続く地位に関するくだりは、‘国民全体としての同意(総意)’が同地位の基盤であることを示しています。第1条に忠実に従えば、天皇に関しては‘日本国民の総意’がなければ地位は認められない、ということになるのですが、実のところ、同総意を確認する手段が記されていないため、今日まで、宣言的な意味合いに留まってきました。

 

 憲法にあって手続の詳細が明記されていない場合、事後的に手続き法を制定することで、その定める内容が実現可能な段階に引き上げられます。例えば、憲法改正を定める憲法第96条につきましても、手続が曖昧なままに放置されてきたのですが、2007年5月に「日本国憲法の改正手続に関する法律」が制定されることで、国民投票を実施できるようになりました。第96条と比較しますと第1条はより具体性を欠いているため、手続き法に関する関心は薄い状況にあったものの、先の大戦から80年余りが経過し、時代の流れの中で皇室も国民意識も変化しています。こうした現状に鑑みますと、‘国民の総意’を確認する手続を設ける必要性は高まっているように思えます。心理に依拠する統合形態からしましても、国民の総意がなければ、もはや国家・国民の統合を象徴する役割を果たすことはできなくなるからです。例えば、以下のような手続が考えられます。

 

(1)現行の皇室典範における皇位継承順位第一位の皇族に対して、国民の承認を問う国民投票を実施する。成人人口の過半数(最低限2分1であるが、より高い比率が望ましい・・・)を超える承認を得た場合、同皇族が即位する。

(2)承認要件を満たさなかった場合、二回目の投票を行なう。この際には、国民の選択肢が増え、1)皇位継承第2位の皇族を承認する、2)皇室典範を改正する、3)皇族制度を廃止する

(3)(2)の1)で容認多数を得た場合、同候補の皇族が即位する。2)が多数を占める場合には、さらに、第三回目の投票が行なわれ、1.女性天皇、2.旧宮家との養子縁組、3.女系天皇の可否が問われ、同結果を受けて皇室典範が改正される(今般の改正案は、この段階で登場する・・・)。また、3)が多数となった場合には、憲法改正手続へと速やかに移行し、第一条が改正される。この際には、古来の国家祭祀の継承、朝廷文化の保護・保存、新たな統合の象徴(三種の神器など・・・)の設置の有無などが議論される。

 

 選択肢が3以上となる場合には、上位二案による決選投票を行なう方がより‘国民の総意’に近づけることができるかもしれません。また、(1)を省略して、継承順位1位の皇族を対象に(2)から始める手続も考えられましょう。何れにしましても、国民が蚊帳の外に置かれているような今日の状況は、憲法に照らしても大いに問題であり、皇室典範の改正よりも、まずは、第1条に基づく手続き法の制定に取り組むべきではないかと思うのです。

 

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