中国やロシアに顕著な特徴の一つとして、その言動の不一致があります。例えば、中国の習近平国家主席は、「グローバル・ガバナンス・イニシアティブ」なる構想を打ち上げ、中国主導で「人類運命共同体」を構築するに際して、主権平等、国際法治、多国間主義、人間本位、行動の道筋の五つを「五大核心理念」として位置づけたそうです。同構想を聴く人々は、心からの賛同の拍手をおくるよりも唖然とさせられたことでしょう。何故ならば、中国の実際の行動はまさしく「五大核心理念」の真逆であるからです。
多くの人々は、中国がリーダーとなって実現する‘グローバル・ガバナンス’とは、主権不平等、独裁者による人治、中国一国主義、人権侵害、行動の強制が基調となる世界に過ぎないと考えるはずです。中国の現状が、まさにそれを行動で証明しているからです。またもや‘悪い冗談’としか思えないのですが、これもまた、人類支配のための高等なる心理作戦であるのかもしれません。
近年、ジョージ・オーウェルの『1984年』に注目が集まるようになったのは、現実が、同小説に描かれている世界に近似してきたからなのでしょう。ITやAIの発展によるデジタル全体主義化のリスクのみならず、国際社会の構図並びにそれに連動するかの如き各国の独裁化傾向がこの懸念を深めているのです。例えば、昨今、国際社会では、ロシア、中国、アメリカの三大軍事大国による三国鼎立状態が取り沙汰されていますが、この構図も、世界が三つの超大国に分裂していた同小説の世界をどこか彷彿とさせます。これらの三国は、国民に対しては相互に敵対しているように見せかけながら、何れもが‘上部(ビッグ・ブラザーの黒幕?)’によってコントロールされているらしく、三国が同盟関係を組み替えつつ絶えず戦争を起こすことで、何れの国の全体主義体制が維持されると共に、人類全体が巧妙に支配されているのです。
そして、『1984年』において‘暴露’された詐術的な心理的手法に、二重思考というものがあります。「戦争は平和なり 自由は隷属なり 無知は力なり」は、同国を支配する‘党’が掲げる三つのスローガンなのですが、真偽の逆転や矛盾を人々に受け入れさせるための洗脳教育として描かれています。知能レベルが高い人ほど難解で‘高度’な思考である二重思考を会得できるとされていますが、これもまた真偽が逆であって、知能レベルが低い人あるいは権力に媚びた人ほど、二重思考に染まってしまうのでしょう(本当のところは、‘馬鹿の故事’の現代版では・・・)。何れにしましても、二重思考は、人々の内面に踏み込み、知性や理性の働きを封じてしまう一種の‘支配道具’なのです。
『1984』年の世界はソ連邦のスターリン独裁体制をモデルとして描かれたとされ、二重思考も、共産主義国、独裁国家、全体主義国家の思想統制の手法をよりインパクトのある誇張した形で表現しているのでしょう。このため、現実においても、ロシアや中国の言動の不一致ぶりは際立っております。となりますと、これらの諸国は、自らの言行不一致や矛盾を十分に承知しながら、戦略的な作戦として二重思考を実践していると言う可能性も高くなります。
暴力主義的な行動の原因が、単なる無知、情報不足、あるいは、未熟な思考力にあるならば、それは、情報提供、教育、説得等によって解消されえることを期待することが出来ます。しかしながら、精神心理学をも駆使した心理作戦として二重思考を実行しているならば、これは、極めて‘厄介’な問題となるのです。そして、共産主義の生みの親であるカール・マルクスはグローバリストにしてユダヤ人であり、ロンドンには、タビストック人間関係研究所も実在することを考慮しますと、冒頭で述べた「グローバル・ガバナンス・イニシアティブ」とは、習近平国家主席の口を借りたグローバリストによる世界支配計画であるのかもしれません。もちろん、天国の名を語った地獄という意味で・・・。このように考えますと、人類が取り組むべき来年の課題も自ずと見えてくるように思えるのです。
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