万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国が支離滅裂な理由とは

 昨日の12月29日から、中国の人民解放軍は、台湾近辺の周辺海域において大規模な軍事演習を開始しています。海峡封鎖あるは台湾包囲の予行練習とも見られ、台湾をはじめ周辺諸国の中国に対する警戒感をさらに高めることとなりました。同演習について中国政府はアメリカによる台湾支援の動きや日本国における存立危機事態発言に対する対抗策として説明しているようですが、この説明も、‘悪い冗談’としか言いようがありません。強盗団に狙われている家に対して、隣家の人々が警備の強化を手助けしたところ、‘我らの強盗力を見せつけてやる’とばかりに、強盗団が塀を乗り越える訓練をデモンストレートしているようなものであるからです。中国による台湾侵攻計画は‘妄想’といって鼻で笑っていた人々や‘挑発した日本が悪い’と息巻いていた人々は、一体、何と言い訳をするのでしょうか。

 

 ところで、台湾有事には、どこかに強い作為性を感じさせる要素があります。それは、中国の主張があまりにも無理筋であり、理性や知性があればあり得ないレベルの稚拙な根拠で通そうとしてる点にあります。例えば、台湾が、中国の‘固有の領土’ではないことは、その辿ってきた歴史を具に調べれば一目瞭然です。台湾は、清代に至って清朝支配下に置かれた夷狄(‘野蛮な異民族’という認識の表現・・・)の土地であり、その理由も、清朝に対抗する復明運動の拠点となっていたからに他なりません。しかも、その清国自身も、満州を故地とする女真族という異民族によって建国されており、台湾は、‘征服者による征服地’という二重の意味で、殷に始まるとされる中国の歴代王朝とも、中国のマジョリティーである‘漢人’との歴史的な関連性が薄いのです。

 

 日本国でも、台湾は、16世紀に記された豊臣秀吉の書状に「高山国」としてその名で記録されており、中国の支配が及んでいない土地として認識されていました(もっとも、「高山国」に実体があったかどうかは不明・・・)。また、ポルトガル船によって最初に‘発見’され(美しい島、即ちフォルモサと名付けた・・・)、スペインが貿易拠点を築き、短命に終わりながらオランダ東インド会社によって植民地化された時代もあります。諸外国の史料等からも、中国の主張は容易に覆されてしまうのです。もちろん、清朝のように前王朝を完全に滅ぼすために中華民国が遷都した台湾を‘征服’しようとしているとする見方もありましょう。しかしながら、領土という側面からしますと、たとえ前政府が遷都した先であれ、その土地の‘領有権’を主張することはできないはずです。

 

 以上の経緯からしますと、台湾並びに澎湖諸島は、日本国が正式にこれらの地を放棄したサンフランシスコ講和条約の発効した1952年4月28日に、本土から政府が移転した中華民国の下で主権国家としての台湾の地位が確立した(国際法上の独立国家としての3要件が揃う・・・)、と解釈するのが順当なように思えます(中国の主張を封じ、台湾問題の平和的解決のためには、台湾の国家としての法的地位について国際司法裁判所に再確認を求めるべきでは・・・)。そして、中華人民共和国が、歴史的根拠も法的根拠も欠けているに拘わらず、なおも台湾併合を主張しているとしますと、無理を承知で次なる戦争要因を意図的に残したとする疑いが強まるのです。この動きが本格化、あるいは、表面化するのは、米中国交正常化が進展したニクソンキッシンジャー外交のあたりとも推測されます。

 

 そもそも、過去の帝国の版図をもって今日において領有権を主張することはできないのですが(イスラエルは、トルコから領土回復を要求されたらこれに応じるのでしょうか・・・)、戦禍を未然に防ぐには、中国のみを対象とするのではなく、その背後に潜む‘真犯人’並びに真の目的を見抜くことが大事なように思えるのです。

 

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