万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

地方自治体の長に再選制限を

 

 先日実施された宮城県知事選挙では、現職の村井嘉浩知事が6回目の当選を果たしました。知事の任期は4年ですので、6期目ともなりますと実に24年もの間、村井知事は県のトップの座にあり続けることとなります。宮城県では、いわば‘村井長期政権’、あるいは、‘村井体制’が続いてしまうのですが、近年、地方自治体、とりわけ主要都市では、‘政権’の長期化が目立ってきているように思えます。

 

 政権の長期化、それは、古来、独裁化や政治腐敗の主要な要因の一つとされてきました。古代ギリシャの諸ポリスにあっても僭主(独裁者)の出現は常に回避すべき事態と認識されており、アテネでは、将来において僭主となりそうな危険人物を事前に排除するために陶片追放という制度が創設されたほどです。この政権長期化の政治的リスク要因は、時空を超えて今日まで残されており、国政であっても地方政治であっても変わりはありません。

 

 古代アテネ陶片追放の制度は、結局、政治的ライバルを合法的に追い落とすために悪用され、本来の目的から逸脱してしまうのですが、人事権をもつ人々が適任者を選ぶという選挙制度も、危険人物や不適切な人物に政治的な決定権を与えない(落選させる・・・)、というネガティブな意味において‘陶片追放’と同様の役割を果たしています。しかしながら、未然排除ではないため、選挙を経てトップの座に就任してしまいますと、後に権力の集中が試みられ、独裁者に豹変したとしても、これを事後的に解任することは難しくなります(例えばナポレオン一世は、国民投票によって皇帝に選出されると集権体制を強化し、議会をも形骸化した・・・)。

 

 選挙による選出が、必ずしも独裁化を防止しないとすれば、さらなる制度的工夫を要することとなります。そこで登場するのが、任期制、再選の制限、リコールといった諸制度なのです。任期制は、アテネ共和制ローマをはじめ、古代都市国家の民主的制度にも既に見られるのであり、公職にあって権限を行使し得る期間を限定することで、政権の長期化、すなわち、独裁化を予め防いでいます。しかしながら、この制度でも、完璧に独裁者の出現を防げるわけではありません。同一人物が無制限に再選できるのでは、権力は、やはり同一人物の手にあり続けてしまうからです。しかも、常に現職の立場にありますので、如何様にも自ら再選に有利となるように、下部の行政組織等をも動員して政治環境や選挙をも操作しようとすることでしょう。

 

 かくして再選の繰り返しにより、独裁体制は合法的に成立し得ます。そこで、任期の設定に加え、再選を制限することにしたのです(例えば、1951年2月27日に採択されたアメリ憲法修正22条では、大統領の三選を禁止・・・)。今では、大統領制を採用する多くの諸国では、同職の再選には制限が設けられています(この側面は、近年、ロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席のように、自らの政権の長期化を狙った再選の規制緩和の目的を説明する・・・)。

 

 地方自治体にありましても、同一の人物が、長期に亘って行政の長に座り続けることには弊害が伴います。村井知事につきましても、先日の知事選挙にあって辛勝となったのも、多文化共生主義の推進など、県民の意向を無視したグローバル政策の押しつけや政策手法の強引さが目立ってきたからなのでしょう。しかも、村井知事は全国知事会での会長も務めております。同会が、多文化共生や農産物輸出の拡大など、グローバリストの方針に沿ったテーマに共同で取り組んで着る様子を見ますと、グローバリストが、国政レベルのみならず地方自治体レベルでもトップの‘傀儡化’を狙っている節も伺えるのです。

 

 独裁を阻止する次なる手段はリコールとなるのですが、これは、日本国でも地方自治体レベルにおいて既に制度化されています。現行の制度にあっても、県民で宮城県有権者も、事後的に不適切な知事の職を解くことができるのです。

 

 以上に述べてきましたように、今日、地方自治体レベルにあってもグローバリズムの浸透が進んでおり、それが、グローバリストが選んだ行政の長の再選をもって進行している実態に照らしましても、地方自治体の長の再選回数を規制すべきように思えます。村井知事は、当選を確実にした後に、「票を取るためだけに有権者に迎合するやり方は、政治家として間違った姿だと思う」とも述べていますが、それでは、同知事並びに政治家は、有権者の声を聞かずに、いったい誰に‘迎合’し、誰の声を聞いて政治を行なっているのでしょうか。日本国が民主主義国家なのですから、政治家は、有権者に“迎合して(声を聞いて)、政治を行なうべきなのではないでしょうか。

 

よろしければ、クリックをお願い申し上げます。

にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村